その概念に代わり,現代的な無意識の概念は,フロイトの概念に比べて知名度ははるかに低いものの,新たな歴史的重要事項として功績があると考えられている。19世紀のドイツ人の物理学者であり生理学者のヘルマン・フォン・ヘルムホルツは,「unbewußter Schluß」または「無意識的推論」という語を提出し,シェパードのテーブル天板のような錯覚がどのようにして起こるのかを説明した。つまりヘルムホルツは,心が,物理的データをもとに意識的な知覚をつくり出す方法を説明しようとしたのだ。意識的な知覚とは,「見る」という私たちの日常的で主観的な経験を説明するものである。私たちの視覚システムが単純な2次元画像にだまされ得るのは,網膜に映った2次元の形のイメージを,それが示唆する形へと意識的に知覚する3次元のイメージへ,無意識的な心的活動が入れ替えるからである。
M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.27
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
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