しかしその後状況は変わった。この10年で人種IATを用いた研究が急速に蓄積され,2つの重要な知見が明らかになったのだ。まず第一に,アメリカ社会において,自動的な白人への選好は広く浸透していることがわかった。インターネット調査や実験室研究で人種IATを受けた人のおよそ75%が,自動的な白人への選好を示した。これは驚くほど高い数値である。私たち(マーザリンとトニー)は,このような結果になるのが自分たちだけではないことを知った。
第二に,人種IATで示される自動的な白人への選好は差別的行動と関係があることが実証された。この人種IATは,心からまた誠実に,平等主義的な信念を信じている研究参加者の差別的行動の度合いをも予測したのだ。これは矛盾しているように聞こえるかもしれないが,実証された事実である。自分のことを人種に関して平等主義だと説明した研究参加者でも,人種IATは,信頼性高くまた何度も,研究のなかでの差別的行動を予測したのである。
M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.87
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
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