高齢者,皮膚の色の濃い人々,同性愛者,何であれ,IATが心に潜むバイアスを明らかにするときの示唆の1つは,「外」にある社会や文化と「内」にある自分の心を分ける境界線には透過性がある,ということである。私たちが望むと望まざるとにかかわらず,分化で共有されている態度は私たちのなかに染みこんでくる。先述した同性愛活動家の例にあったように,ネガティブなレッテルを貼られている人たちの権利のために闘っている人であっても,文化からの一貫したネガティブな情報には影響を受けるのだ。高齢者自身も弱齢者への選好をもつということは,外の世界の価値観が心のなかに染みこんでくることのさらなる証左である。私たちの心は,外界にあるものの多くを身につけるので,分化に根ざしたステレオタイプの方向に引かれるのに抵抗することはほぼ不可能なように思える。
M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.118
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
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