私たちは現代のアメリカに根強く残っている人種バイアスは,表には出てこない底流のようなもので,下記の2種類の隠れたバイアスからなると考えている。2つのうち影響力の小さい方は,バイアス保持者自身にも認識され支持されているが,おそらくポリティカル・コレクトネスや印象操作の圧力の影響で,公的に表現することを本人が意図的に抑制しているものである。2つめの,より影響力が大きいと私たちが考えているものは,その保持者自身すら自分がそれを保持しているという事実に気づいていないため,公に表出されないままでいるというものだ。これらは第3章で説明した通り,IATで測定できるような連合知識という形態のバイアスである。まとめると,マイノリティに対するこれら2種類の隠れたバイアスは,あからさまな偏見という形態よりもずっと,アメリカ社会での差別的行動に大きく貢献するということだ。マイノリティは,アメリカ社会において今後もけっして減少することがない対象であり,この2種類の隠れたバイアスの影響で,今後もずっと人種的,民族的な嫌悪感を表現される対象であり続けるだろう。
M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.278-279
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
PR