生物学では生物の時間とエネルギーの配分先を,おおまかに生命維持,成長,そして繁殖の三つの生活の領域に分ける。生活史理論ではこの三つの生活の領域はおたがいの時間とエネルギーを奪い合うと仮定し,これを「配分の原理」と呼んでいる。動物は食べることによりエネルギーを得て,そのエネルギーを成長と繁殖に配分する。いったい生物は時間とエネルギーをどのように生活の各領域に配分するべきなのか。しかも,その配分は日々の生活に限られず,生涯を通して上手に配分されなければならない。
生命維持は日々生きていくための必要最小限の活動をさす。成長と繁殖には生命を維持する以上のエネルギーを必要とするうえに,生命を維持する活動から時間を奪ってしまう。さらに,成長と繁殖を両立させるために必要なエネルギーを同時に摂取することは難しい。生活に内包される,配分の原理に基づいた駆け引きによって生物の生活史は進化する。
D・スプレイグ (2004). サルの生涯,ヒトの生涯:人生計画の生物学 京都大学学術出版会 pp.50
PR