ミューティレーションが獣によるものなのか,宇宙人のメスによるものなのかについて,もし実験で確かめることができれば,それ以上議論の余地はなくなるだろう。そうした実験は実際,2度行なわれており,キャトル・ミューティレーションの宇宙人生成説に対する最大の反証になっている。
その1つはキャトル・ミューティレーションを実際に起こしてみる野外実験で,1979年9月,ワシントン州アルカンザスの保安官局に所属する2人の警察官の手によって実施されている。
実験の手順は,自然死した子牛をそのまま放置しておき,その死体の行く末を30時間にわたって,じっと観察し続けるという根気のいるものだった。
そして,キャトル・ミューティレーションは警官たちの見ている目の前で実際に発生したのである。
観察されるうちに,子牛の死体からは舌が消え,片目がくり出され,そして肛門は丸く穴を開けられ,血はほとんど残っていない状態となった。つまり子牛は,最後にはまさにキャトル・ミューティレーションされた動物そのものの状態と化したのだった。
観察を続けていた警官によると,子牛をミューティレーションして去っていったのは「アオバエとスカンクとハゲタカだった」という。
一例だけでは反論にならない,と思う人もいるかもしれないが,それは違う。こういった問題ではたとえ一例にせよ,自然な条件下でキャトル・ミューティレーションが発生すると示せた意義は非常に大きい。というのは,捕食という実例が一例でもあれば,他のミューティレーションについても,単なる捕食である可能性を否定できなくなってしまうからだ。
単なる捕食ではないと主張するのならば,捕食ではないという主張を何らかの形で証明せねばならない。捕食によって起こされたのではないということを証明しないかぎり,宇宙人などというものを言い出す余地がなくなるからだ。
皆神龍太郎 (2008). UFO学入門:伝説と真相 楽工社 Pp.144-145.
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