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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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富の蓄積と少子化

M・ムルダーは,少子化の説明に富の蓄積を重視する人類学者の一人である。人類は富の蓄積に対して非常に強い執着心を持つために,それを生活のなかで優先させてしまう心理を持つ,という説である。そこで,生涯において,早めの子作りと更なる富の蓄積の間を選ばなければならない場合,後者を選んでしまう,と説明する。ムルダー自身,東アフリカのある遊牧民の結婚と家族計画を調べる研究に参加している。この民族は,一夫多妻の家族が一般的で,子だくさんを良しとしながらも,男性が結婚を決める動機は,子孫の人数ではなく,物質的な計算に基づいている場合が多い。すなわち,世帯主の男性は,妻をただ多く娶るのではなく,一人一人の子供にできる限り多くの資産(すなわち家畜)を継がせるような資産管理をしているそうである。このような心理は子育てを助ける結果に最終的にはなったはずである。資源のほとんどは食物のように生活に必要な物資であっただろう。ところが,いわば無限に富を蓄積することが,産業革命後の生活では可能になってしまう。そして,とりあえず生活のゆとりを追求しているうちに,子供が少ないまま一生を終えてしまう人々が増えているのである,という理論で現代の少子化を説明する。

D・スプレイグ (2004). サルの生涯,ヒトの生涯:人生計画の生物学 京都大学学術出版会 pp.166-167
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