イタズラの張本人がいくら後で懺悔や告白をしようとも,一度その気になってしまった人々が頑強に彼らの告白を否定し,とにかく超常現象ということにしてしまおうと圧力をかけてくる事態は,超常現象研究の歴史の上ではたびたび起きてきた。人々が一度その気になってしまうともう引き返せない,ということがいかに恐ろしいかがよくわかるだろう。「あんなに素晴らしい巨大なサークルを,お前らみたいなジイサンたちが作れるわけがないだろう」と批判され傷ついたダグとデイブは,サークルの作成から今後一切手を引くと発表した。だがダグとデイブがサークル作りを止めてからでも,英国南部に発生するサークルは一向に減る気配を見せず,その姿はさらに複雑に進化を続けてみせた。
「ホラ見ろ,ジイサンたちがサークルを作るのを止めてもサークルは消えないじゃないか。やはりサークルは宇宙人からのメッセージだったんだ」
一部のサークル研究家は,きっとこう思ったに違いない。だがそれは,今度は逆にサークル研究家らが,ダグとデイブを甘く見すぎた結果だった。ダグとデイブは公にはサークルをもう作らないと発表してはいたが,実はその裏で他人の畑に出かけていって,前と同じように毎週末に,せっせせっせとサークルを作り続けていたのだ。
ただ以前と違うのは,今度は自分たちがそのサークルを作った張本人だという確実な証拠を残すよう工夫をしたということだ。
つまり2人は,「サークルは宇宙人からの賜り物」などと信じている輩は,そもそも宇宙人が作ったサークルと人間の作ったサークルの違いなどまたく区別ができもしないのに偉そうなことを言っているだけなのだ,ということを証明してみせようとしたのだ。
皆神龍太郎 (2008). UFO学入門:伝説と真相 楽工社 Pp.168-169
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