アニメ『サザエさん』が住むまちは,作者の長谷川町子が住んだ世田谷区の桜新町をモデルとするのはよく知られたところ。サザエさんの家は,2世帯7人家族が暮らす庭つき一戸建て。しかも平屋だ。
物好きな人が計算したところによると,敷地は93坪。波平は,医者でも高級官僚でも大会社の重役でもなく,中堅会社の中間管理職に過ぎない。それでも,敷地100坪の家に住んでいたことになる。
サザエさんはアニメだから,登場人物は年を取らないし,家も古くならない。しかし,現実世界は,人にも家にも寿命がある。わが国の木造住宅の寿命は30年といわれるが,実際にはもう少し長持ちするようだ。
それでも35年から40年も経つと老朽化が目立ち,小手先の修復では済まなくなる。それ以上に,家の造りが時代に合わなくなり,どうしようもなく住みにくくなる。ここに,ちょうど同じサイクルで人の問題が加わってくる。
池田利道 (2015). 23区格差 中央公論新社 pp.50
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