日本で「就社ではなく就職」の考え方が広まり始めたのは,雑誌の就職特集や求人広告等で「仕事のやりがい」が大きくクローズアップされるようになってからだ。確かにお金以上のやりがいを得て働く人は輝いて見える。
でも働いたこともない人が,「仕事のやりがい」というものを果たしていきなり理解できるだろうか。単なるあこがれでなく,「どうしてもやりたい仕事」を見つけられるだろうか。
入社後も異動をしながら知識・技術を磨いていくという現実を見据えるならば,「その会社の風土・文化に自分が合うかどうか」といった「就社」を優先させるべきである。
「ここの会社は体育会系でビシバシ鍛えられる」だとか,「ここの会社は社員の自由度が高い」といった,会社ごとの社風が必ずある。そういう観点で自分に合う会社を見つければ,たとえ将来,人事異動で違う部署に移っても,パフォーマンスを発揮することができるだろう。
私がいう「就社」は,学生たちの間にあるブランド優先主義とは異なり,外から見たイメージや,なんとなくのあこがれて企業選びをするのではなく,「自分はその雰囲気に合いそうか」「自分は馴染めそうか」ということに主眼を置いている。
学生にはとにかくいろいろな会社をたくさん見させたほうがいい。自分に合う会社を見つけるという意味で,先の格言は一巡りして「就職ではなく就社」が正しいのである。
太田芳徳 (2013). リクルートを辞めたから話せる,本当の「就活」の話:無名大学から大手企業へ PHP研究所 pp.80-81
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