言うまでもないことだが,話を狭く学力だけに限って,それが高いのと,低いのとではどちらがいいか,という問い方をすれば答は明白である。それは高いほうがいいに決まっている。テストをやって,100点を取るのと,80点取るのとではどっちがいいでしょうと言っているのと同じだ。それは100点を取るほうがいいのであり,それが可能かな,ということを調べるためにテストってものがあるのだ。
しかし,問い方を変えれば答はシンプルではなくなる。テストで100点を取る子と,80点しか取れない子では,どちらがいい子だろうか,と考えてみるのだ。
それだと,いちがいには答えられない,という答になるはずである。
どちらがいい子か,という総合評価ならば,テストの結果だけでとてもではないがあれこれ言えるはずがないのである。
それどころか,100点を取る子と,80点を取る子では,どちらが頭がいいだろうか,という問いにしてみても,そう簡単には答えられない。そのテストにおいては,100点取った子のほうが成績がよかった,というのは事実だが,頭がいいかどうかはそれとは別のことなのである。
清水義範 (2003). 行儀よくしろ。 筑摩書房 pp.32-33
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