もちろん,先生の中にはとびきり優秀な人もいるだろう。教え方がうまく,子供たちが楽しく喜んで勉強をし,子供の心のトラブルまで癒やしてくれて,みんな明るく元気に育つ,というようないい先生だ。ごくまれにはそういう立派な先生もいる。そういう人には,いい先生だなあ,と感心し,尊敬する。
しかし,先生の水準をそこに求めるのは無茶である。ほとんどの先生は,そこまで優秀ではない。それが当然で,それは苦情を言う筋合いのことではない。
だって,高校時代の成績がパッとしなかった私ですら入学できたような大学に,入れた人たちにすぎないのだから,先生って。決して軽んじる気持はないが,教育大学というところに入学して,普通に卒業できればそれで資格ありなのだ。都道府県の教員採用試験を受けなければならないが,それに堕ちる人はほとんどいない。
大学で,教育学や,児童心理学や,各教科の指導法を学んでいるから,それでまあ,小・中学生に教えることは一応できるのだ。分数の割り算も,鎌倉幕府のことも,水の浮力のこともちゃんと授業できるんだからそれでいいのだ。
もちろん,一応教えられるだけで,その人がその学問に秀でているわけではない。
清水義範 (2003). 行儀よくしろ。 筑摩書房 pp.53-54
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