つまり,第二工学部合格者は初年度に125円が必要で,授業料は前期と後期の分納制になっていた。では,この125円は現在の貨幣価値に換算すると,いかほどになるのか。精確な試算は難しいが,ここでは「かけそば」の値段にもとづいて算出してみたい。
週刊朝日編『値段の明治・大正・昭和風俗史』によれば,1941(昭和16)年当時のかけそばの値段は1杯16銭だった。これを基準にすると,入学料および授業料の合計である125円があれば,781杯のかけそばを食べられる。
いっぽう,現代のかけそばを1杯200円と見積もったとしよう(少々安めかもしれないが,著者の事務所の近くにはこの値段で営業している店がある)。781杯分は15万620円になる。かけそば1杯を少々高めの300円と見積もると,781杯分は23万4300円だ。このように15万〜23万円が125円の現在価値に相当すると考えてよい。学費については,現在のほうがかなり高いようである。
中野 明 (2015). 東京大学第二工学部:なぜ,9年間で消えたのか 祥伝社 pp.95-96
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