つまり,入り口では何に向いているか,分からないのが仕事というものです。
日本型は,だから入職の時に学部をあまり気にしません。若年時代は,社会での職歴さえ,それほど気にしない。それよりも,異動による社内再チャレンジで,一番適性のあるところに再配置されていく。この仕組みはかなり合理性が高いのです。
というところで,企業側から見ても,働く個人から見ても,「人に給料がついて回る」仕組みのメリットはけっこう大きいのです。
逆に,欧米型だと,転職は容易で,違う企業での再チャレンジはいくらでも可能です。だけれども,「営業に合わないから経理に行きたい」という時,これができません。社内異動はもちろん,転職でもそれはかなわないでしょう。
もし職務チェンジを考えるなら,あとはもう一流の大学院に入り直して,専門的な勉強をするくらいしかないでしょう。たとえば,組織心理学を学んで人事に行ったりとか,ファイナンスを学んで財務に行ったりとか。こんな形で,大学院に行かなければ職務チェンジができないという問題がある。
欧米では産・学が非常に近い関係にあるといわれますが,裏を返せば,職務チェンジを希望する時には,大学院に行くしかないという現実があるからなのです。
海老原嗣生 (2013). 日本で働くのは本当に損なのか:日本型キャリアVS欧米型キャリア PHP研究所 pp.29-30
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