こんな形の日本型人事のことを「茹でガエル」などといいます。新卒者にいきなり大手法人を担当させて,社債や株式も全部やれと言ったら,「熱すぎ」て飛び出てしまうでしょう。ところが,こうやってちょっとずつ育てるので,脱落者が少なく,みな,いつの間にか「熱い」世界に耐えられるようになる。
これは商社でも同じ。三十代中盤で台湾新幹線やベトナムの原子力発電所のプロジェクトを率いている人は,年間数千億円を動かしています。こんなの,茹でガエルで覚えなければ,無理でしょう?
メーカーもまったく同じ。やはり,三十代中盤には,工場と開発担当とマーケティング担当の間に立って,何百もの販売代理店を管理できるようになっている。
つまり,日本の企業は,一糸乱れぬ形でみなをゆっくり育て,いつの間にか大きな仕事ができるようにしているのです。結果,三十代中盤になると,二十代の時の五倍,10倍の売上を上げるようなポジションに就いている。だから二十代の間は,「ぞうきんがけ」と呼ばれるのです。
海老原嗣生 (2013). 日本で働くのは本当に損なのか:日本型キャリアVS欧米型キャリア PHP研究所 pp.54-55
PR