かつて高卒就職していた層まで大学へ進学するようになったため,大学は変質していきました。90年代以降に新設された大学のほとんどが,偏差値50以下となります。そう,大学は学力面では下方にウィングを伸ばしました。
その受け皿となる「膨れた大学相応の雇用」を考えなければいけないのに,現在の大卒就職論議は,ほとんどが経団連を中心とした,最上層部の採用慣行の注文となっている。ここに大きなズレが生まれているのです。こうした超大手が新卒一括採用を崩して通年採用にしても,既卒三年新卒扱いにしても,採用数自体が非常に少ないのだから,大きく膨れた大学生を受け止めることなどできないでしょう。
同様に,大学生に職業教育を施し,即戦力にすべきという議論にも,疑問を禁じえません。そうして即戦力になったとしても,やはり超大手の採用は少なく,彼を受け止めきれない。だから,その受け皿の多くは中小となります(たしかに教育的コストが厳しい中小企業には嬉しい施策ではありますが)。
明らかにズレているのです。
海老原嗣生 (2013). 日本で働くのは本当に損なのか:日本型キャリアVS欧米型キャリア PHP研究所 pp.128-129
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