epilepsy(てんかん)とepileptic(てんかんの)という二語は,「捕らえる」または「襲う」を意味するギリシャ語のepilambánein に由来する。てんかんという病気には長い歴史があり,おそらく有史以前の人類にもあったものと思われる。最古の記録は中東のメソポタミア時代にさかのぼる。アッカド帝国(紀元前2334-2154)のある文書には,てんかん発作の記述があり,てんかん発作を起こした人は頭を左に向け,手足を硬直させ,口から泡を吹き,気を失ったという。てんかんの原因は身体的なものであり,食事や衣料品など理性的な手段で治療すべきだと信じる医師がいる一方で,てんかんは超自然的な力によって生じるもので,怒りを鎮めるために清めやまじないで治療すべきだと主張する呪術師や魔術師,にせ医者がいて,両者は何世紀にもわたって議論を闘わせた。
スザンヌ・コーキン 鍛原多惠子(訳) (2014). ぼくは物覚えが悪い:健忘症患者H・Mの生涯 早川書房 pp.26-27
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