競争力は「適応競争力」と「不適応競争力」に区別する必要がある。適応競争力を持つ人は,忍耐力と決意を持って問題に立ち向かうが,いかなるときもルールを尊重することを忘れない。たとえ負けたとしても,価値ある努力をしたことに満足する。また,あらゆる点でベストである必要はないと自覚し,自らが訓練をしている領域でベストになることを目指して努力する。自分の仕事においては完璧主義者であるかもしれないが,テニスやシャフルボードが下手であっても気にしない。さらに,成長には長い時間が必要だと知っているために,喜びを先送りできる。この健全な競争力の真髄は,現時点の地位やランクを過度に気にせず,優れた存在になることを求めて絶えず努力することにある。人々に感銘を与える,偉大で英雄的なパフォーマンスを導くのは,適応競争力である。
一方,競争力という言葉に悪い印象を与えているのは,さまざまな形の不適応競争力だ。この競争能力を持つ人には,不安感や歪んだ衝動などの特徴がある。敗北も勝負のうちだと受け入れられず,周りが競争していないときでさえ競争しようとする。何事も自分が一番でなくては気がすまず,競争が終わった後も,他者と自分を比較するのをやめられない。笛が吹かれても,止まろうとしない。相手を挑発し,望んでいない競争に引きずり込む。勝てないときには不正な手段を使おうとする。
ポー・ブロンソン7アシュリー・メリーマン 小島 修(訳) (2014). 競争の科学:賢く戦い,結果を出す 実務教育出版 pp.24-25
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