学校行事を催すかどうかを投票で決める場合,当該の学校の校舎で投票をすると,賛成票の割合が高まる。その場にいるだけで,学校に対してノーと言いにくくなるのである。同じく,大学生同士が議論をするとき,寮の自室を使った学生の方が,相手を言い負かしやすくなる。
こうした研究結果から,近年では,ホームアドバンテージは人間が進化の過程で生得的に獲得した縄張り意識——自らが所有する空間を支配したいという強い欲求——に根ざすものであるという見解が主流になっている。縄張り意識が活性化すると,侵入者に果敢に立ち向かおうとすることで,競争心が高まる。縄張りを脅かす存在を感知したとき,人は自信と意欲を高め,攻撃的になる。最適な方法で状況をコントロールしているという,自己効力感も高まる。ホームアドバンテージを神経科学の観点から解明しようとする研究も進んでいる。現時点の研究成果は,ホームでの勝利によって,脳の報酬系が,強力かつ独特の方法で活性化されることを示唆している。人はホームでの勝利を想像することで興奮し,実際に達成することで大きな満足感を得るのである。
ポー・ブロンソン7アシュリー・メリーマン 小島 修(訳) (2014). 競争の科学:賢く戦い,結果を出す 実務教育出版 pp.74-75
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