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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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微妙な二重性

ですから,大学教授間に成り立つのは,独立した主体相互の平等な関係で,両者に命令や指示,あるいは「お仕えする」関係は不可能ということになります。しかし,それでは現実の組織としての大学は成り立ちません。大学が組織として運営されるには,入試,カリキュラム設計,成績評価といった教育上の実務はもとより,研究プロジェクトの遂行,そして大学運営そのものにかかわる多くの実務や事業が不可欠ですし,それらの実施には一般企業と同じように責任者の下での指揮命令が不可欠です。そのため,大学教師は「教授」「准教授」といった独立の立場と共に,学部長や学科長,委員長,室長,室員等々といった組織運営上の職務を兼ねることになります。そして,これらの職務上の立場で大学教師がすることは,企業組織の実務と本質的な差はないのです。事業の成果はもちろん求められるし,効率性や利益も必要で,トップダウン式の意思決定が必須です。
 産業界の人々が見誤りがちなのは,大学のダイナミズムを支えるのがこの微妙な二重性にあることです。もしも,大学を後者の企業的な原理だけで動くものにしてしまったら,大学の根底をなす教授たちの創造性は失われ,そのような大学は徐々に活力を失っていきます。どうやっても,企業のようには大学は動かないのです。

吉見俊哉 (2016). 「文系学部廃止」の衝撃 集英社 pp.137-138
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