そして,姿勢のとり方も自信に影響する。自信のある人は自分の可能性を信じており,リスクを恐れず,テストステロン(支配と結びつく化学物質)の割合が高く,コルチゾール(ストレスと結びつく化学物質)の割合が低い。では被験者に支配的な姿勢をとらせたら,どうなるだろう。それを調べるために,コロンビア大学のダナ・カーニー教授とそのチームは被験者を集め,新しい心拍計の性能を試したいので協力してほしいと話し,2つのグループに分けた。
片方のグループは,支配を示す2つのパワフルなポーズのうち,どちらかをとらされた。1つはデスクの上に両足をのせ,両手を頭の後ろに組んで視線を上げるポーズ。もう1つはデスクの後ろに立って身を乗り出し,両手のひらをデスクにつけるポーズである。
もう片方のグループは,パワフルでないポーズ2種類のうち,どちらかをとらされた。1つは両足を床につけ,両手を膝に置いて視線を床に落とすポーズ。もう1つは,立ったまま腕と脚を組むポーズである。
ポーズをとり終わった1分後に,被験者は自分をどの程度「パワフル」で,「やる気満々」に感じているか,採点を頼まれた。彼らがとったポーズは,その自信にかなりの影響をあたえていた。「パワーのポーズ」をとった被験者はとらなかった被験者よりも自信が強くなっていたのだ。だが,それだけではない。
続いて実験では,被験者がリスクを負う割合が試された。被験者めいめいに2ドルを渡し,それをとっておくか,コインを投げて裏表で賭けをするか尋ねたのだ。賭けに勝てばお金は倍の4ドルになるが,負ければゼロになる。「パワーのポーズは人を大胆にする」の仮説どおり,支配的なポーズをとった被験者は八割以上がお金を賭け,支配的なポーズをとらなかった被験者は六割しか賭けなかった。
リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.278-280
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