人的な環境だけではない。地域環境も肥満・健康な食生活,身体活動などと関連している。人口250万人の住民がいるリスボンの7669人を対象に,この人たちの特徴(ライフスタイルや教育年数,年収,就労状況など)とともに,どの地域に暮らしているかを調べ,その地域の特徴も調べて,それらの関連を分析した研究がある。まず個人レベルに着目すると,肥満は身体活動が少なく,教育年数が短い者などに多い。健康的な食生活は,教育年数が短く,離婚していて,失業中,低所得の者などでは難しい。身体活動は教育年数が短く,低所得の人で少なかった。
次に,地区の特徴としては,犯罪の多さ,人口密度や運動施設(体育館やプール)の有無,ソーシャル・キャピタル(社会的統合の強さ)などを調べ,個人の特徴も考慮(統計的に調整)して分析した。その結果,犯罪が多い地域では健康な食生活,身体活動が少なく,肥満が多い。運動施設がある地域,ソーシャル・キャピタルが豊かな地域では身体活動が多かった。つまり,同じ個人の特徴をもつ人でも,どのような地域環境に暮らしているのかによって,食生活や身体運動料が違ってきてしまうのだ。
近藤克則 (2010). 「健康格差社会」を生き抜く 朝日新聞社 pp. 184
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