この傾向が人間にそなわっているわけは,そもそも人間の脳が,即座に手に入る短期的な報酬を求めるように進化してきたからだ。私たちの祖先は,高エネルギーの果実をその場でむさぼり食ったり,性的刺激にすぐ反応したりしなければならなかった。そうしていなければ,あなたも私も,今,この世にはいないだろう。
問題は,もはや身体的にも必要としておらず,種としての存続にも何の意味もないような報酬に満ちた環境を,私たちが築いてしまったことにある。たとえ必要のないものであっても,そういったものは報酬であるため——つまり,脳の中で期待感と快楽といった特定の感情を引き起こすため——私たちはつい手を伸ばさずにはいられない。
言いかえれば,私たちは「すぐに気分をよくしてくれる=フィックス」に手を出してしまうのだ。
デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 14-15
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