単純だが,それでも強調する価値のある事実がある。テクノロジーは,努力と報酬との比率において,報酬——それも通常は短期的報酬——の率を高めるという事実だ。あらゆる動物は短期的報酬を好む。その理由は,すでに見てきたように,生物の目標は生きのびることにあり,即時的な報酬は,それを可能にしてくれるからだ。しかし,いつでも望むときにすばやく報酬を手に入れるようなことは,他の動物にはできない。それは人間においても,最近まで,ごくひと握りの人にしかできなかったことだ。
だが,無制限に物が手に入ることは,恩恵を害に変えてしまう可能性がある。たとえば糖分がその例だ。私たちは,甘い物を好むように進化してきた。果実はエネルギー源であると祖先が気づいて以来,無数の世代を経て,私たち人間の内臓は,オレンジなどの果実がもたらす糖分の爆発的横溢に適応できるようになった。でも,実際の果実より10倍も糖分濃度が高いオレンジ味の炭酸飲料水をゴクゴク飲んだとしたら?
デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 114
PR