少年が登場するのは,1912年のスペインの新聞広告。これは,ドイツの製薬会社バイエルが打った広告で,咳,風邪,そして”炎症”に効くという触れこみで,ヘロインシロップを宣伝している。別の広告では,品のいい服を着た主婦が,愛情を込めて,幼い娘の口にヘロインをスプーンで流し込んでいる。「ラ・トス・デサパレセ」と広告は謳う。「咳が消える」という意味だ。この広告キャンペーンは,大手製薬会社を批判する者が掘り出して2011年にネット上で公表するまで,完全に忘れ去られていた。これらの広告は,子どもを製品の使用者に想定していたが,他に1つ,同じ主婦が,気管支炎を起こしている夫にヘロインシロップを飲ませる広告がある。夫は,首に厚手のスカーフを巻いて,家に帰ってきたところだ。だれかがふざけて,こんなジョークを書きくわえている。「お帰りなさい,ハニー。ほら,スマックよ!」(スマックには「キス」と「ヘロイン」の意味がある)
デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 130-131
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