なかでも,もっとも興味深いのは,砂糖は,ある重要な局面において,コカインやアンフェタミンのように作用するという発見である。コカインまたはアンフェタミンに病みつきにしてから供給を断ち,1週間経ってから,ごく微量の同じ薬剤を与えるとラットが過度に反応すること,一方,その薬物を一度も投与されたことのないラットはまったく反応しないことは,それまでにすでに判明していた。つまり,依存症に陥っているあいだに,ラットはその物質に”感作”されたわけだ。実のところ,ラットは交差感作される。すなわち,コカインに病みつきになっているラットは,ごく微量のアンフェタミンにも過剰に反応する。その逆も同様だ。この「乗り換え」は,人間の依存者についても観察されているが,倫理的な理由から,人間について同じ実験を行うことはできない。
プリンストンの研究者チームが裏づけたのは,アンフェタミンまたはコカインを砂糖に置きかえても,同じことが起きるということだった。砂糖に病みつきになったラットは,アンフェタミンあるいはコカインに感作される。その逆もしかり。この所見から研究者たちが導きだした結論は,砂糖は,アンフェタミンやコカインに類似した方法で,側坐核内にドーパミンを放出させるというもの。2008年に発表されたこのエビデンスは,砂糖が依存症を引き起こすという説をもっとも強力に裏づける証拠である。
デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 147-148
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