昔ながらのポルノとインターネットポルノとの違いは,ワインと蒸留酒の違いに似ている。穏やかな陶酔作用のあるものとして何百年も使われてきたポルノは,ここにきて,粗野な蒸留過程を経ることになったのだ。オンラインのデジタルポルノは,ジョージ王朝時代のイングランドのジンに相当する。それはみじめさと退屈を和らげるみだらな陶酔感を確実にもたらしてくれるものだ。効果がどれだけ強いかは,試してみるまでわからない。だがその時点に達したら,もはや手遅れだ。ほんの数年前まで,レインコートを着て学校の校庭の周りをうろつくイタチ顔の男たちがすることだと思っていた行為から,自分も抜け出せなくなっているのに気づくことになる。
インターネットポルノには,他の多くの依存物質と同じように,脳の報酬回路を再配線する力がある。深刻な影響を受けるのは少数派だけだが,私たちがここで話しているのは,1億5000万人の”少数派”であることを思いだしてほしい。しかも,その数はうなぎのぼりだ。何も依存症が”病気”だと信じなくても,100年前に喫煙が広まって以来もっとも急速に広がりつつある強迫的行動がポルノ依存であることは,だれにでもわかる。
デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 260
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