両親や教育者に対して,ホールはこう提言した。「青年を甘やかしてはならない。彼らをしっかり監督し,公共への奉仕の精神,鍛錬,利他主義,愛国心,権威を尊重する姿勢を叩き込むべきである」。青年期の反抗やストレスの扱いについて,ホールの見方はやや偏っていたようだ。それでも,青年期と思春期に生物学的なつながりがあることを示唆し,また,後世の神経科学者が発見する脳の順応性,すなわち「可塑性(plasticity)」という言葉を先んじて使ったホールは,この分野のパイオニアと見なされている。彼は「性格や個性は形成されるが,すべては可塑的(プラスチック)である」と書いているが,それは合成樹脂のプラスチックのことではなく「柔軟で可変的」という意味だ。また彼は,「青年期は自意識と野心が強くなり,あらゆる性質や能力が強化され,過剰になりやすい」と記している。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 26
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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