では,小児期から青年期を通じて,脳の領域はどのような順でつながっていくのだろう。脳画像診断が開発されたおかげで,それを調べられるようになった。核磁気共鳴画像法(MRI)では,脳の正確な画像だけではなく,領域間のつながりを見ることができる。さらに,新型の機能的MRI,略して「fMRI」では,脳の各領域が活性化する様子を見ることができる。複数の領域が同時に活性化した場合,それらの領域はつながっているのだ。この10年間にアメリカ国立精神衛生研究所の主導で,21歳までに脳の領域がどのようにつながっていくかを調べる大規模な研究が行われた。
結果は驚くべきものだった。
脳の領域は,後方から前方へとゆっくりつながっていった。そして,最後にようやく,前頭葉と「つながった」。実のところ,ティーンの脳の完成度は80パーセントで,つながりの弱い領域が20パーセントも残されていたのだ。つまり,ティーンの脳では,前頭葉と他の領域をつなぐ配線がまだ完成していないのである。なぜティーンは感情の起伏が激しく,いらいらしがちで,衝動的で,かっとしやすいのか。なぜ集中力や根気に欠け,おとなと関わるのが苦手なのか。なぜドラッグやアルコールの誘惑に弱く,危険な行動に走りやすいのか。すべては前頭葉の未成熟さとつながりの弱さが原因だったのだ。そして,あなたやわたしが,自分のことを洗練された知的なおとなだと思うのであれば,それは前頭葉とのつながりが完成しているからなのだ。
ティーンの前頭葉ではすべての「シリンダー」が十分に発火しているわけではないので,彼らがひんぱんに悲劇的な間違いをおかしたり,災難に遭遇したりするのは,当然と言えば当然である。前頭葉とそのつながりを作る作業は,20歳になってもまだ終了しない。したがって,大学時代も,脳はまだ脆弱性を残している。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 45-47
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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