後にシナプスの研究でノーベル賞を受賞するジョン・エックルスは,シナプスが変化するのにどれほどの刺激が必要なのかがわからず,悩んでいた。「学習という現象を説明するのは難しい。なぜなら,検出できるほどシナプスを変化させるには,長期にわたってシナプスを過剰に使うか,あるいは使わずにいる必要があるからだ」と彼は書いている。彼が気づかなかったのは,自分がいらいらしながら観察していた反復反応こそが,脳が働き,まさに学習している証拠だったということだ。繰りかえし刺激を受けると,ニューロンはより強く反応するようになる。こうして,脳の回路は「学習」する。そして,深く刻まれた知識ほど,思い出すのも使うのも容易になる。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 87
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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