睡眠は日々の生活に欠かせない要素だが,詳しいメカニズムはほとんど解明されていない。わかっているのは,だれにとっても欠かせないということくらいだ。睡眠のパターンは一生のうちに変化するが,これはすべての生物に共通して言えることだ。乳幼児は「ひばり型」で,早寝早起き。若者は「ふくろう型」で遅く寝て遅く起きる。このような睡眠パターンをクロノタイプと呼び,「ひばり型」を「朝型」,「ふくろう型」を「夜型」と言う。睡眠パターンは脳のシグナルとホルモンの複雑な関係によってコントロールされており,シグナルとホルモンはどちらも成長に応じて調整されていく。大半の種では,青年期に夜更かししていても,おとなになると「早寝早起き」になる。
つまり,ティーンは学校へ行くために,おとなのクロノタイプに合わせて,無理矢理,早起きしているのだ。しかし,早く起きたからと言って,早く寝るわけではない。夜になっても彼らの脳は調整されず,本来の夜型のクロノタイプに固執しがちだ。その結果,睡眠時間は短くなる。そして休日には,体内時計に命じられるまま,朝寝坊に戻る。好きなだけ寝ていていいと言われたら,彼らは一晩に9時間から10時間眠るだろう。しかし,学校へ行くために起きなければならず,常に1日2.75時間分の睡眠が足りないままだ。これが慢性睡眠不足症候群の原因と見なされている。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 103-104
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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