しかし,わたしの両親の生まれ故郷であるイギリスでは,こううまくはいかなかっただろう。イギリスでは,小学6年生の時に,共通テストを受けることになっている。その成績が悪い子は,Aレベルに進むことができず,それは大学に進学しないことを意味する。イギリスでは,教育は権利ではなく,むしろ特権なのだ。誰もが大学へ行くわけではないので,教育は階級制度の一部となっている。イギリスや他の多くの国々で,子どもたちが思春期も迎えないうちにテストされ,高等教育を受けるに値する知的能力を持っているかどうかを評価されるというのは,実に残念なことだ。もしわたしの息子たちが11歳や12歳,あるいは15歳や16歳で,このような人生を決める「選別」を受けたとしたら,今そうなっているように,良い大学を出て社会で成功できていたかどうかはわからない。ティーンには不確定要素が多い。そんな彼らの将来が,未成熟の脳の評価で決められるのは,理不尽と言えるだろう。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 258-259
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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