脳科学によって行動を説明することには限界があるが,それをますます複雑にしているのは,脳の成熟年齢を科学者が引き上げていることだ。言い換えれば,人は何歳で神経学的に成熟するかということについて,今のところ明確なラインも境界も区分もないのだ。しかし,ますますはっきりしてきたのは,脳の成長は20歳以降もまだ続いていることだ。わたしは科学者として,医師として,あらゆる疑問には答えがあり,人生のあらゆる出来事と段階には明確な境界があると考えたいが,同時にそんなものはないということを知っている。また,嵐の10代が過ぎれば順風満帆と考えたいが,それも実際は違う。しかし,こうしている間にも,地方自治体は,危険な状態にある未成年者のための更生プログラムやカウンセリング・プログラムを発案するより,さらなる刑務所や収容施設の建設に税金をつぎ込んでいるのだ。
フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 292
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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