実のところ,両親は,一般に考えられているほどには大きな役割を果たしていない。ローラと私の調査では,反社会的行動に対する家庭の影響は,平均して全分散の22パーセントを説明するにすぎない。それに対し家庭外の環境の影響は分散の33パーセントを説明する。9歳児でさえ,両親より遊び仲間に大きな影響を受ける。
これは信じがたく思われるかもしれないが,われわれの発見は偶然ではない。反社会的行動をテーマとするあらゆる遺伝研究(100以上ある)を総括したレビューを見ても,結果は同じである。同じことは,反社会的行動以外のさまざまな行動や性格にも当てはまる。実際,行動遺伝学の第一人者,ミネソタ大学のトム・ブシャールは,「成人後の性格への,環境を共有することによる影響はほぼゼロ」だと主張している。そう,何の影響もないということだ。
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.73-74
PR