IF(インパクトファクター)をめぐる話題はさまざまに論じられてきた。その最大の問題点は,個人の業績評価指標として応用されるようになったことである。これは,雑誌の評価を専門家の意見に依るだけでなく,定量的に,分野を越えて比較するための指標として開発された元の意図から,大きく逸脱した応用である。IFの定義を理解すれば,誰でも不適切な利用と言い切れるものである。
IFについて語る人々と話した経験から,半分以上の人々はその定義を知らないことに気づいた。被引用数を各雑誌の出版論文数で割った値であることを理解している人はいるが,算出データを直前の2年間に限定していることは知られていない。さらに,分母にあたる出版論文数は,原著論文,レビュー,短報などの研究論文に限定しているが,分子になる被引用数には,すべての記事への引用をカウントしている事実はほとんど理解されていない。
山崎茂明 (2007). パブリッシュ・オア・ペリッシュ:科学者の発表倫理 みすず書房 p.97
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