ここで攻撃性のタイプの違いを考えてみよう。MAOA戦士遺伝子は,コントロールされた冷酷な暴力より,感情的で衝動的な,血気にはやる暴力を振るいやすい性格の形成に,とりわけ大きな役割を果たすのかもしれない。ハン・ブルナーは,オランダの親族の研究では,怒り,恐れ,フラストレーションに反応して生じる衝動的な形態の攻撃性が,より頻繁に見られたと報告している。ロサンゼルスで行なわれた研究も,この解釈に合致する。この研究では,低MAOA遺伝子を持つカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の学生は,より攻撃的な性格のみならず,人間関係に過敏に反応する性格を持つことがわかった。つまり彼らは,感情的に傷つきやすい。また,社会的に排除されることに対して,脳がより強く反応した。これは,個人的な中傷によって彼らがいとも簡単に動揺することを意味する。
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.90
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