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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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前頭前皮質の障害

なぜ前頭前皮質の機能不全が暴力に結びつくのだろうか?何が機能不全に陥った脳と犯罪行為を結びつけるのか?前頭前皮質の障害は何を引き起こすのか?これらの問いには,以下のようにさまざまなレベルで答えられる。

1.情動レベル 前頭前皮質の機能の低下は,たとえば怒りなどの生の情動を生む大脳辺縁系のような,進化的により古い脳の領域に対するコントロールの喪失をもたらす。大脳辺縁系の生む情動は,洗練された前頭前皮質によって蓋をされているとも言え,蓋を取れば,情動はあふれ出す。
2.行動レベル 前頭前皮質にダメージを負った患者を対象に行なわれた神経学的な研究によって,そのようなダメージはリスクの大きい行為,無責任な態度,規則の侵犯を導くことが知られている。そこから暴力行為へ至る道のりは,それほど遠くない。
3.人格レベル 前頭前皮質のダメージによって,衝動性の増大,自制能力の喪失,行動の調整/抑制能力の喪失など,さまざまな人格の変化が引きおこされる。暴力犯罪者がこれらの性格を持つことは,容易に想像できる。
4.社会レベル 前頭前皮質のダメージは,未熟,要領の悪さ,的はずれな社会的判断をもたらす。このような社会的スキルの欠如が,不適切な行動や,暴力を用いずに面倒な状況を解決する能力の欠如をもたらすことは明らかだ。
5.認知レベル 前頭前皮質の機能不全は,知性面での柔軟性の喪失と,問題解決能力の劣化に結びつく。このような知的障害は,のちに学業不振,失業,貧困などにつながり,ひいてはその人を,暴力に訴えたり,犯罪に走ったりしやすくする。
 
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.108-109
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