マインドフルネス・トレーニングによって,脳に短期的,長期的双方の変化をもたらせることを示した神経科学の研究を振り返ってみれば,瞑想に効果があることはよく理解できるはずだ。瞑想は,左前頭葉を活性化する。それは,何かポジティブな情動を感じると左前頭葉の活動が活性化し,不安が低減するという事実にも合致する。また瞑想は,前頭葉の皮質の厚さを増大させる。この脳領域が,情動のコントロールに重要な役割を果たし,犯罪者においては構造的にも機能的にも損なわれていることはすでに見た。加えて瞑想は,道徳的判断,注意,学習,記憶を司る脳領域を強化する。犯罪者がこれらの認知機能に問題を抱えていることもすでに見た。総括すると,瞑想は,犯罪者においては機能不全をきたしている脳領域を改善する。だから暴力の緩和に役立つのだ。
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.448
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