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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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受刑者への扱い

アメリカ諸州のうち44州は,消極的なものではあれ,受刑者に対して優生学を実行しているも同然なのを知っているだろうか?男性受刑者は精子を持ち出すことを,また,女性受刑者は卵子を持ち出したり,精子を受け取ったりすることを禁じられている。つまり,仮釈放の可能性のない終身刑に服している受刑者は,自分の遺伝子を子孫に受け渡すことができない。彼らは,生殖という進化のゲームにおける敗者なのだ。この線は,とうの昔に司法制度によって引かれている。
 この厳然たる事実は,ほとんど気づかれていない。あなたはそれについて考えたことがあるだろうか?何人かの同僚の犯罪学者に尋ねてみたが,考えたことは一度もないという答えが返ってきた。2009年に,ニュージャージー州トレントンにある矯正施設のスタッフ200人以上に話しをした時にも,同じ答えが返ってきた。講義や学会で同じ質問をしたときには,誰もが沈黙していた。
 ここには皮肉がある。1990年代の遺伝研究者は,犯罪を阻止する「最終的な手段」として優生学を推進していると非難された。言うまでもなく,この非難は誤りである。1つはっきりさせておこう。「消極的な優生学」と私が呼ぶ,犯罪者に対する現在の方針は,遺伝学や生物学の研究から生まれたものではない。それは社会政策から直接生じた産物だ。優生学につながるから,犯罪の遺伝的研究は中止すべきだと善意で主張する人はいるが,同様に犯罪の社会科学的研究や,犯罪に対する公共政策の研究を中止せよという声はまったく聞かない。しかし私たちは,そのような公共政策を通じて,重罪犯の遺伝的適応度を減じ,彼らの遺伝子を遺伝子プールに残せないようにしているのだ。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.544-545
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