スキナーははっきりと罰に対して反対した最初の心理学者の一人なのだが,そうした面はあまり注目を得られていない。自由と尊厳のある生活をするためには,罰を無くせば良い。そして報酬に基づく行動形成をすることによって誰もが尊厳をもって生きていける世界を作るべきだ,というのがスキナーの根本的な思想である。ところが,この考え方に反対する人は多い。何が「良い」行動なのかを誰か特定の人が決めるのがケシカランというのである。しかし,罰においてこそ罰を与える人が基準を決めて罰を与えている。
実際,罰の効果は無いとほとんど全ての心理学者は主張する。この点で意見を異にする心理学者はいない。罰が問題なのは,罰に効果がないだけでなく,人格的なダメージを与えることにもある。さらに,何が良くない行動であるのかということを罰を与える人が決定している点も問題である。まさに自由と尊厳を脅かす手法なのである。
サトウタツヤ (2015). 心理学の名著30 筑摩書房 pp.34-35
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