心理学者にとっては,カーネマンがノーベル経済学賞をとる前から,トゥバスキー&カーネマンという2人の名前は,リンダ問題などと共に認知心理学者として認識されていた。したがってノーベル経済学賞をとったからといって,カーネマンは経済学者じゃない,心理学者なんだ!というのが心理学者の気持ちなのである。私たちが育てたんだ!という気持ちであろうか。
しかし現実は残酷である。『岩波世界人名大辞典』においてカーネマンは行動経済学を開拓した経済学者として評価されているのであった。ただし,ノーベル賞受賞の理由は,不確定状況下における判断についての心理学的研究の洞察を経済学に統合したことであり,受賞分野としてあげられていたのは,経済心理学ならびに実験経済学であったから,彼のことを心理学者であるとしても基本的には間違いにならないだろう。
サトウタツヤ (2015). 心理学の名著30 筑摩書房 pp.273
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