大麻取締法は,1948年に正式に施行され,現在に至っているが,この法律が誕生するまでには様々な出来事があった。
そもそも日本には,この法律が成立する以前には大麻を取り扱うことには何の罰則もなかった。そればかりか,大麻は優良な農作物として国が奨励し,全国各地で生産されていたのである。
遥か縄文時代に遡るといわれる日本における大麻の生産は,第二次世界大戦前までは稲と並んで重要な位置を占めていた。また,大麻取締法が制定された時点では,日本では一般的に大麻を吸引する習慣はなく,虫除けのために葉を燃やして屋内を燻したり,きこりや麻農家の人々がタバコの代用品として使用する程度のものであった。
世界の様々な宗教でおこなわれてきた精神変容のための大麻の吸引は,日本でも一部の山岳信仰や密教の中でおこなわれていたが,法律で取り締まられるような犯罪意識は全くなかったのである。また,「印度大麻煙草」という名で販売されていた大麻は,喘息の薬として一般の薬局でも市販されていた。
長吉秀夫 (2009). 大麻入門 幻冬舎 Pp.49-50
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