リーネル・ジーターは,外集団均質化と呼ばれる,よく知られた心理バイアスの犠牲になったのだ。この心理バイアスは,長年の研究によって明らかになったもので,私たちの大多数は他集団のメンバーの識別よりも,自分が所属する集団のメンバーの識別にずっと長けていることを示す。外集団均質化の根底には,私たちの身に染みついている認知バイアスの多くがそうであるように,機能的な論理(実際的な理由)が存在している。例を挙げれば,一般的に私たちは自集団のメンバーの識別に関してより豊富な経験をもっているし,日常生活で付き合いのある人たちを識別するほうが重要だ。また,他集団のメンバーと付き合うときは,個人レベルよりも集団レベルでの交流が多くなる(アムステルダムのサッカーチームがフィレンツェからナポリに電車で移動するのであれば,各人の区別はできなくとも,イタリア人とオランダ人を区別できれば事足りるだろう)。たとえて言うなら,鳥類学者でもない限り,アメリカコガラとカナダコガラ,そしてシロガオエボシコガラの違いなどわかるはずもないし,たとえ誰かが鳥の名前を教えてくれたとしても,どちらもただのさえずっている鳥にしか見えないのと同じだ。
ダグラス・ケンリック 山形浩生・森本正史(訳) (2014). 野蛮な進化心理学 白揚社 pp. 70-71
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