簡単に言ってしまうと,私たちの研究結果が示唆していたのは,年齢の好みのように見えるものも,突き詰めれば年齢そのものが問題になっているわけではないということだった。女性は子供に身体的な資源を注ぎこむため,男性は生殖能力と健康に結びつく特徴を求める。一方,男性は子供に間接的に資源を与えるので,女性はそれらの資源獲得能力に結びつく特徴を求める。そして,男性の資源獲得能力と女性の生殖能力は年齢と関係はしているが,年齢そのものが原動力なのではない。
進化生物学について多少なりとも知識があれば,この説明は自明に思えるかもしれない。だが当時は,人間の求愛と繁殖のつながりについて真剣に考えている社会学者はほとんどいなかった。だから,進化の観点を加えたこの研究結果について私たちが話しはじめると,冷笑されたり,そんな説明は明らかに間違っているだとか,アメリカ文化の規範だけで十分に説明がつくとか言われることもしばしばだったのだ。
ダグラス・ケンリック 山形浩生・森本正史(訳) (2014). 野蛮な進化心理学 白揚社 pp. 99
PR