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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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生活史理論

生物学の理論家たちは生活史理論と呼ばれる有力な概念を発展させてきたが,人間の動機の発達について考えるとき,この概念は大きな意味をもつ。そしてまた,この生活史という考え方によって,マズローのピラミッドの最下層に発達上の優先事項が置かれた理由ばかりでなく,なぜ私たちがピラミッドの頂点を入れ替えたのかも説明できる。
 生活史を研究している人たちは,以下のような問いに答えようとしている。繁殖が可能な身体に成長するまでに必要な時間が,生物によって長かったり短かったりするのはなぜか(たとえば,マダガスカルの小型哺乳類であるテンレックの仲間は生まれて5週間で繁殖をはじめるが,ゾウは性的に成熟するまでに十数年かかる)。そうして成熟した動物は,サケのように繁殖のための資源を奔流のごとく1度限りですべて使い果たすのか,それともカメのように,数ヶ月,数年のあいだに何回かに分けて繁殖の試みを行うのか?その動物は子育てに資源を振り分けるのか?振り分けるとしたら,子が自立するまでに養育にどのくらい投資をするのか(たとえば,魚のなかには卵を川床に放出した時点で家族としてのつながりが失われるものもあるが,人間の場合は数十年にわたって子供を援助するだけでなく,しばしば孫の養育を助けることさえある)。
 生活史とは,本質的に「生物学的経済」に関する理論であり,あらゆる動物は有限の資源しか割り当てられていないという前提が中心に据えられている。だから,動物の成長過程には,その希少な資源をいつ,どのように割り振るかについて常にトレードオフ[一方を優先すれば他方が犠牲になる問題]が存在することになる。
 また,生活史は大きく2つの局面に分けられる。ひとつは身体的努力に着目したものだ。身体的努力とは,動物が自らの肉体をつくるために消費するエネルギーに関することだ(経済学的な言い方をすれば,この局面は,身体という銀行口座に入金をする時期にあたる)。もうひとつは繁殖努力だが,人間をはじめとするいくつかの種では,さらに交配と子育てに分けられる(これは,先ほどの口座の金を個体の遺伝子複製のために使う時期だ)。これら2つの局面には,それぞれ異なるトレードオフが存在する。

ダグラス・ケンリック 山形浩生・森本正史(訳) (2014). 野蛮な進化心理学 白揚社 pp. 155-157
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