けれども,こうして「同性愛者は生まれつき体の一部が違う」っていうことにしてしまうと,「じゃあそこを手術して治せばいいじゃん?」という話になってしまうんですよね。「それならば犯罪者扱いをやめましょう」じゃなくて。シュタイナッハのきんたま移植手術に始まり,後世には,同性愛者とされた人を無理矢理去勢したり,脳を手術して廃人状態に追いやったりと,「同性愛治療」と称した恐ろしい手術が続いていってしまうことになりました。
このような事態は,同性愛者を「生まれつき他とは違う種類の人々」と考えることの危険性として,すでにケルトベニが指摘していたことです。けれども,「人間はみんな異性愛者として生まれつく」という前提にある限り,同性愛が「やめさせるべき犯罪行為」とか「正常な状態にあれば異性を愛せるはずの人間の逸脱行為」だと言われてしまうことは避けがたいことでした。
牧村朝子 (2016). 同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル 星海社 pp.65-66
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