親や教師は,赤い色がテストの成績に悪影響を及ぼすという研究結果を軽く見ないほうがいい。たとえ潜在意識レベルのささやかな影響であっても,成功の足を引っ張る要因を把握し,それが子どもたちに及ぼす弊害を軽減してやるべきだ。数年前,オーストラリアのクィーンズランド州は州内の30の学校に対し,採点に赤ペンを使わないよう通達した。赤は攻撃的な色であり,子供の精神に甚大なダメージを与えかねないというのが理由だ。本章で紹介してきた実験は,赤が子どもの精神の健康に害を及ぼすかを調べたものではないが,赤が成績に悪影響を与えることは,実験によって明らかだ。成績が悪くなれば,子どもの精神にダメージが及ぶ可能性は確かにあるのかもしれない。教師にとって,赤ペンではなく黒ペンや鉛筆で採点や講評を書くのは,難しいことではないはずだ。別紙に講評を記してもいいだろう。デジタルファイルの形式で提出されたレポートに講評をつけて返却する場合は,コメントを表示する「吹き出し」を赤色にしないほうがいい。こうした点に気をつければ,子どもたちが赤い色を見ても,失敗の危険をあまり意識しないようにできるだろう。
タルマ・ローベル 池村千秋(訳) (2015). 赤を身につけるとなぜもてるのか? 文藝春秋 pp.79
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