この実験結果から見て取れるように,黒と白が呼び起こす連想は,人の判断と評価のみならず,現実の行動にも影響を及ぼす。黒を身につけると,攻撃的な人物と見られやすくなるだけでなく,実際にその人物の攻撃性が強まる可能性もあるのだ。いつかのシャブオットのパーティーの招待客たちは,自分が白い服を着ていることに影響されていたとしても不思議はない。つまり,私が彼らのことを実際以上に親切に感じただけでなく,彼らが実際に親切に振る舞っていたのかもしれない。
フランクとギロビッチも述べているように,環境の影響は無視できない。攻撃的で競争的な環境では,ことのほか黒い色が攻撃性と競争性を連想させやすい。その意味では,集団への帰属意識と密接に結びついた衣服であるユニフォームとほかの衣服を同列に論じることはできない。しかし,特定の役割を担うための服に袖を通した瞬間に連想が生まれることは,スポーツのユニフォームだろうと,警察や軍隊の制服やフォーマルウェアだろうと変わりない。
タルマ・ローベル 池村千秋(訳) (2015). 赤を身につけるとなぜもてるのか? 文藝春秋 pp.118
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