忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

反ユダヤ思想

当時は過激な反ユダヤ思想がはびこっていた時代であり,ヴァイマール共和国ばかりが特殊なケースだと見られていたわけではない。たとえばベルリンに1918年から20年まで滞在し,本人の弁によると,現地のアメリカ人記者団のなかで唯一のユダヤ人だったというベン・ヘクトは,ちょっと意外なこんな体験を語っている。「奇妙に思われるだろうが,ドイツにいた2年間,ユダヤ人であるわたしは,反ユダヤ主義運動など見たことも聞いたこともなかった。ドイツで過ごすあいだ,一度たりとも,Jew[ユダヤ人の意]という言葉が侮蔑的に使われたのを耳にしたこともなかった。[……]第一次大戦後のドイツで反ユダヤ主義運動について聞いたり,見たり,感じたり,気配を察したりする機会は,どの時代のアメリカよりも少なかった」
 あるいはヘクトは,以下に述べるふたつの理由から,あきらかな反ユダヤ的言論を意図的に見なかったことにしたとも考えられる。まずひとつ目の理由は,この問題に関して,アメリカ人は上から涼しい顔をして語るような立場にはないと彼が主張したかったため。もうひとつの理由は,第二次大戦とホロコースト直後の混乱期にこの文を書いたヘクトが,今回の惨事を招いた元凶は,平均的なドイツ人の国民性であるという理論を組み立てようとしていたためだ。ドイツ人はいくらか教養が高く学のある人物に見えたとしても,「個人の道徳観念よりも,指導者に従うという道徳観念のほうを優先していた」とヘクトは言う。別の言い方をすれば,ドイツ人は指導者の政策に魅力を感じて従ったのではなく,たんに指導者が忠誠を要求したため,それに従順に従っただけというわけだ。

アンドリュー・ナゴルスキ 北村京子(訳) (2014). ヒトラーランド:ナチの台頭を目撃した人々 作品社 pp.95-96
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]