忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

デジャヴュの3つの錯覚

 既視感は3つの錯覚を伴う。第1は,思い出のように感じるが,実際はそうではないという錯覚。第2は,真の予言はできないのだが,これから何が起こるのか知っているような気がするという錯覚。第3は,はっきりした理由もないのに,漠然とした不安を掻き立てられるという錯覚。この3つの錯覚は,どんなにわずかで希薄なものであっても,心に混乱を招く。普通の状態なら淀みない連想の流れであるはずのものが,人をしばらく立ち止まらせる。初めてでありながらなじみがあるように感じる経験は,すぐに次の反響を呼ぶ。それは内省的なものだ。すなわち,既視感を覚えた次の瞬間,人は自身の経験を驚きながら観察している。すべての既視感に共通しているのは,このミラー効果である。残りの部分には違いがある。既視感体験は,たいていは一過性だが,慢性的に生じることもある。自然に生じることもあるが,電気刺激によって生じることもある。すぐに消える錯覚と見なされるものもあれば,統合失調症の妄想の一部と見なされるものもある。はっきりした神経障害がなくても現れるが,てんかん発作の前触れである場合もある。これらすべての病状に当てはまるような単一の説明はありそうにない。現在,もっとも既視感について書いているヘルマン・スノーが指摘しているように,研究者たちの研究結果はしばしば互いに矛盾している。ある研究者が神経病との関係を立証したと主張すると,ほかの研究者たちはそうではないとか,相互関係はないと反論する。年齢,知能,社会経済的な身分,外国旅行の有無,精神障害,脳障害,人種的背景など,さまざまな要因が1つひとつ調査されたが,既視感との相互関係は1つも見つからなかった。既視感の頻度は,調査されるカテゴリーによってまちまちだ。「通常の」既視感と慢性的な既視感との違いが程度の問題なのか種類の問題なのかという疑問についても,意見の一致を見ていない。ただし,わずかではあるが,既視感を促進しているように思われる要因が指摘されている。疲労,ストレス,極度の疲労,トラウマ,病気,アルコール,妊娠である。これらは離人症が現れる状況と共通している。離人症は,既視感とのはっきりとした関係がある,唯一の心理現象なのである。

ダウエ・ドラーイスマ 鈴木晶(訳) (2009). なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 講談社 Pp.221-222
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]